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最高裁判所大法廷 昭和25年(れ)377号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人薬師寺志光上告趣意第一点について。

原判決判示第一の事実は、昭和二二年七月二八日頃第二乃至第六の事実は、同二三年一月二六日頃以降の所為である。そしてその間、同二二年一一月一五日施行の刑法の一部を改正する法律(同年法律第一二四号)により、連続犯を定めた刑法五五条は廃止せられた。そして、かかる法律の改正に当り、その改正によって刑法六条の適用に関して裁判上起るべき法律解釈の疑義を一掃するため、特に附則四項の規定を設け、「この法律施行前の行為については、刑法第五十五条・・・・・・の改正規定にかかわらず、なお従前の例による」と明定し、同時にその反面において改正法律施行前の行為と施行後の行為との間には、たとい犯意継続の下に行われたものであるとしても、連続犯として処罰しない趣旨を明かにしたのである。すなわち、前記附則四項は、連続犯の廃止に際し刑法六条の存在を考慮し経過的に特別規定を以て具体的の定めをなしたものと解すべきである。そして、この特別規定によれば前述のごとく連続犯廃止の改正法律施行前の行為と施行後の行為との間には、犯意継続の有無を問わず連続犯を認めない趣旨であることは明白であると言わねばならぬ。論旨は、それ故に理由がない。

同第二点について。

原判決判示によれば(イ)その第二乃至第六の事実は、所論原審公判廷における被告人の自白の外、同公判廷における相被告人等のそれぞれ原判示同旨の供述(但し、相被告人松村については第六事実中の拳銃を突きつけた点、同松永については第六の脅迫の点、同永瀬については第四の点を各除き)を綜合採証して証定しているのである。されば以上事実については、右被告人の自白はそれぞれ相被告人等の供述によって補強されているのであるから、所論の違法はない(以上の点については、昭和二三年(れ)第一一二号同年七月一四日大法廷判決、判例集二卷八七六頁参照)。次に、(ロ)原判示第一の事実については、所論のとおり被告人の原審公判廷における自白を唯一の証拠として断罪しているのであるが、右の如き、当該判決裁判所の公判廷における自白は、憲法三八条三項に所論自白にあたらないことは、既に当裁判所の判例として示すところである(昭和二三年(れ)第一六八号、同年七月二九日大法廷判決、判例集二卷九号一〇一二頁。昭和二三年(れ)第四五四号、同二四年四月六日大法廷判決、集三卷四号四四五頁。昭和二三年(れ)第一五四四号、同二四年四月二〇日大法廷判決、集三卷五号五八一頁)。それ故論旨はすべて採用できない。

よって、旧刑訴四四六条に従い、主文のとおり判決する。

この判決は、第二点中(ロ)の点に対する、塚崎、沢田、井上、小谷、穂積各裁判官の少数意見、真野、斎藤各裁判官の補足意見を除き、その他は全裁判官一致の意見によるものである。そして右各意見は前示昭和二三年(れ)第一六八号及び同年(れ)第一五四四号判決記載のとおりである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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